町人とは
2000年3月某日。
縁あって谷中に引っ越してきたものの、土地勘も何もない僕は、
谷中探訪と称し、新宿の飲み仲間と連れ立って夜の街に繰り出した。
よみせ通りから蛇道を通って根津へ。
いくつか気になる店はあったものの二の足を踏んだ僕らは、
「次の機会に」ということで、家路をたどり始めた。
言問い通りからさんさき坂へ。
突き当たった信号の先に赤い堤燈。
昼間何度か通ったことのあるそのあたりに店の影などついぞ見かけなかった、はず。
見上げれば小さなランタンに「町人」の怪しげなロゴ。
店先には赤さびた手押しポンプに、集乳管。牧場ででも使われていたのだろうか?
入り口は障子の引き戸。
逡巡したけれど、好奇心が勝って、魔法のランプをこすってしまった。
「美は乱調にあり」
そのときそう叫んだかどうか、
一瞬にして僕はその異形の空間に魅せられてしまった。
それから4年。縁はまだまだ続いていたようだ。
カウンターの外から内へ。
しかして私の不思議世界への旅は今に続く。
2006年3月某日 亭主敬白